月々の法話

月々の法話

百尺竿頭進一歩


 大本山永平寺での修行中、何度か古参和尚に「百尺竿頭進一歩」といわれました。古参に言われた言葉には、素直に心に届く言葉と、反発する言葉があります。この言葉は、なかなか理解し難い言葉でした。百尺の竿の上から、一歩を進めたら、まっ逆さまに転落です。臆病な私は一歩を進めるどころか、しがみついた手を離さないでしょう。

 この話は、中国禅宗の禅問答を集めた「無門関」第46則にあり、「正法眼蔵随聞記」の中では、道元禅師が述べた古人の言葉の引用として紹介されています。
 「学道の人、身心を放下して一向に仏法に入るべし。古人云、百尺竿頭如何が歩を進めんと」
 目標を達しえたとしても、そこに安住すれば怠惰につながってしまいます。そこで、さらに一歩を進めろと古人は喝を入れるのです。
 
 人生においても、自己保身をかなぐり捨てて、一歩を踏み出さねばならない時があるかと思います。一生の大事を決める時、思いっきりぶつかってみる!ぶつかって砕け散る事もあるでしょう。でも、そうしなければ何も始まらないのではないでしょうか?鳥が孵化する時は、自分の殻を破って世に出るのです。殻の中にいたのでは何も生まれず、何も始まらないのですから・・・・。
 私自身の戒めとして、身心を放下して、さらに一歩を進める禅僧としての覚悟を忘れない人生を送っていきたいと思います。

2005-12-01 | Posted in 月々の法話Comments Closed 

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