月々の法話

月々の法話

喜心・老心・大心


 6月21日に北海道へ渡り、22日から24日まで中川町の大悟寺さまでの晋山結制の典座職を勤めてきました。典座(てんぞ)というのは禅寺で料理を作る係りの僧侶です。副典(ふくてん-助手)として同行してもらった甥とお寺の近所の女性の方にお手伝いをしていただき、22日のお昼から24日の昼食まで、随喜僧や親戚、役員さん方の食事を作ったのですが、本当に勉強になりました。

 家を出る時、道元禅師の著作である「典座教訓(てんぞきょうくん)」をカバンに入れました。「典座教訓」をあらためて読み直すなかで「喜心」・「老心」・「大心」という言葉に辿りつきました。私が、常日ごろから座右の銘としている言葉の一つです。道元禅師は料理を作る時はこの心を忘れてはいけないと申されています。

 食事を準備する上で大変なのはご飯を炊くということです。今回は本当に沢山のご飯を炊きました。23日には130人分の五目御飯を炊き、24日には、随喜寺院上膳折詰と参列者用赤飯折詰弁当用の360人分のお赤飯を蒸かしました。前日、夜遅くまでかかって仕込み、当日は、手伝いの女性の方に朝早くから蒸かして頂きました。大量のガスを使い続けたため安全装置が働き、ガスが止まって作業が中断するアクシデントもありましたが、無事に法要の時間にあわせてお出しすることが出来ました。
 
 随喜寺院さまや参列者の皆さん方の食事が一通り終わり、ある程度片付けをしたところで、お手伝いの方と一緒に自分達作ったものを食べてみました。その時食べたお赤飯の美味しかったこと!私が思わず「このお赤飯おしいです!」と言ったら、それを聞いた赤飯蒸かしの責任者として頑張ってくれた方が、涙ぐんでました。他のお手伝いの方々も「美味しい!美味しい」と言って食べてました。「もし、ご飯が時間までに炊けなかったらどうしよう・・・。硬かったらどうしよう・・・。」そんな不安がありました。もし、ご飯が炊けなかったら大変なことになってしまいます。汗だくになりながら、助け合いながら頑張ったことで、大きな達成感と喜びを感じたのです。「喜心」というのはこういうことなんだ!私はそう感じました。食べる方に喜んで頂きたい。美味しい料理でもてなしてあげたい!そうした思いで懸命に料理を作ったことが感動を得られたのだと思います。
 平成20年4月に厳修される大本山永平寺三世徹通義介禅師の七百回大遠忌の主題となっているのが「喜心」・「老心」・「大心」の三心です。食の重要性が見直されつつある今、「典座教訓」に学ぶことは多いと思います。
 来月は「老心」すなわち「老婆親切」についてお話しさせて頂く予定です。

大悟寺さまの晋山結制の様子は山寺日記で御覧下さい
2007-07-01 | Posted in 月々の法話Comments Closed 

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