月々の法話

月々の法話

懐かしい鯉のぼりプロジェクト


 5月5日の端午の節句、3月3日の桃の節句、日本人は昔から子どもが生まれると人形を飾ったり、幟を揚げてお祝いしてきました。子どものすこやかな成長を願う親の思いが現れた行事です。
 茨城県北部山間部の奥久慈地方では、昔から端午の節句に鯉のぼりを盛大に行なう風習がありました。竿から三方にロープを張り、20匹から30匹もいっぺんに揚げるのです。五月の青空に元気に泳ぐ鯉のぼりが新緑に映えて、それは美しく豪壮な風景でした。

 しかし、過疎化、少子化の影響で男の子が生まれる事がしだいに減り、揚げる場所の確保や技術の継承という問題もあり、昔ながらの豪壮な鯉のぼりが見られなくなりつつありました。
 そこで、地域の人たちが協力し、昔ながらの鯉のぼりを揚げようと、実行委員会を立ち上げ、昨年から袋田地区各地に「懐かしい鯉のぼり」を揚げています。
 うちでも、長男が生まれた翌年の平成13年から三年間揚げていたので、今年は場所を提供し協力することになりました。

 先月は、全国各地で花壇やプランターの花が荒らされ、水戸の千波湖では、白鳥や黒鳥が殺されるという痛ましい事件が続発しています。現代人の心の退廃、公共心の欠如ということが進んでいるような気がします。そのようなことに、我々宗教者も地域の人たちも、手をこまねいているばかりではありません。地域社会を自分達で守っていくんだという意識で、ボランティア活動をしている人が増えてきています。団塊の世代の大量退職で、地域社会に貢献できる人材が増えています。
 懐かしい鯉のぼりプロジェクトも、強風が吹いて鯉のぼりが絡まったり、やぶれたりすれば降ろして修復しなければなりません。木を切り出して、皮を剥くのも大変な作業でした。今は重機がありますし、大勢でワイワイガヤガヤやりましたので楽しい作業でしたが、昔は、家族や親戚で子どもの成長を願いながら建てたのだろうなと思うと、本当にありがたいものだと思います。
 今年は5月18日まで、揚げ続ける予定です。地域の子ども達の幸せを願って地域の人たちが協力して揚げたたくさんの鯉のぼりが袋田の大空に泳いでいます。

住職のブログ山寺日記「懐かしい鯉のぼりプロジェクト」

2008-05-01 | Posted in 月々の法話Comments Closed 

関連記事