月々の法話

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六角堂再建にかけた人たち


 先月の続きです。映画「天心」の制作準備が進んでいた平成23年3月9日に、地元北茨城に映画に協力する委員会が結成されたそうです。しかし、その2日後、東日本大震災が発生、五浦に押し寄せた巨大津波で、天心ゆかりの六角堂は滅失してしまったのです。

 六角堂というシンボルで、撮影の拠点を失った松村克弥監督は、茨城大学が再建にあたるのに協力しながら映画作りを進めていくことになりました。そして、ただ再建するというだけでなく、岡倉天心が創建した当時の技法で、当時のままに造ろうという方向でまとまり、震災復興ということと共にこの大プロジェクトが始まったのです。

 その辺の裏話は、舞台挨拶でもあり、興味深く拝聴させていただきました。
 震災前の六角堂には畳が敷かれていましたが、創建当時の資料に基づき、板の間に炉を切りました。ガラスは、当時の板ガラスを外国から購入してはめ込んだそうです。そして、外壁の板の色です。ベンガラ塗りといわれる技法を使って塗られました。自然な赤が五浦の景色に溶け込みます。この再現に大子の大工菊池均さんが関わったということを、茨城大学の課長で、再建作業の指揮を執った齋藤勝男さんが、舞台あいさつであかしてくれました。

 映画では、天心が五浦に移ったあとの横山大観、下村観山、菱田春草、木村武山の創作の様子が描かれていきます。特に、春草が極貧の生活の中から、新たな境地に到達し、名作を生み出す苦悩が描かれています。春草ファンの私には、たまらない展開でしたが、春草の絵が観た人の心に響く何かを持っているその理由が映画を観てわかりました。

 天心という人物を、大観が回想していくということで、物語は展開されますが、大観自身は映画ではさほど描かれていません。
 5月に、島根県の足立美術館で横山大観の名作をたくさん観てきました。横山大観にも大いに興味があるので、監督には、横山大観を描いた映画も作って欲しいと思います。

2014-09-01 | Posted in 月々の法話Comments Closed 

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